Protected Audience、SMN のリマーケティング テストで良好な パフォーマンス を記録
概要
- 日本を拠点とし、ソニーグループの子会社であるデマンドサイド プラットフォーム(DSP)の SMN株式会社 (SMN) は、プライバシーを重視したリマーケティングの効果と、同社のサービスに付加価値を与える可能性を評価するために、複数のサプライサイド プラットフォーム(SSP)と協力して Protected Audience API のテストを実施しました。
- API テストへの参加広告主と共に Protected Audience のテスト可能な環境を設定した後、SMN は、API を使用した広告配信が個人情報保護を強化しながら現在のシステムと同様に機能し、ターゲティング広告を配信できることを確認しました。
- SMN は、デフォルトの有効期限ウィンドウに限界があることを突き止めました。プライバシー サンドボックスチームは複数の業界関係者からのフィードバックを見直した後、Flexible Event-level 機能をリリースしました。これは SMN が現在進行中のテストに組み込んでいるものです。彼らの分析は、広告業界がオンライン プライバシーのための新しい基準を構築する上で、SSP、DSP、広告主、そして媒体社間の緊密な連携が不可欠であることを改めて示しました。
プライバシー サンドボックスのリマーケティング技術の検証
デジタル広告のリーディング カンパニーとして、日本の国内市場で大きな影響力を持つ SMN は、プライバシー サンドボックスの取り組みに早期から関与することの重要性を認識し、初期段階から積極的に関与してきました。広告業界では、プライバシー保護ソリューションへの移行が進んでおり、SMN はプライバシー サンドボックスの技術を調査・検証することにしました。
プライバシー サンドボックスの技術が広告の配信とターゲティングの方法を根本的に変える可能性があると考えていた SMN は、API テストに参加した SSPと協力して、Protected Audience API、Attribution Reporting API、Topics API の一連のテストを開始しました。SMN は特に、サードパーティ Cookie に依存せずにカスタム リマーケティング オーディエンスを作成できる Protected Audience API の能力に関心を持っていました。Protected Audience API のテストの目的は明確で、個人情報保護を強化しながら効果的なリマーケティング結果を提供できるかどうかを判断することでした。
「プライバシー サンドボックスは、デジタル広告のパラダイムシフトを示し、アドレッサビリティと広告配信を再構築します。SMN では、技術進化に直面した際の俊敏性と適応性が、私たちの継続的な成功だけでなく、より堅牢で持続可能な広告エコシステムを育成するためにも最も重要であると理解しています。」
実環境でのAPI 検証
日本の堅牢なアドテクノロジー エコシステムは、プライバシー サンドボックス API の開発と地域およびグローバル市場での採用において重要な役割を果たしてきました。SMN での API 検証の開始プロセスの初期段階で、SMN は国内の広告主がこの収益に影響を与える可能性のある、進化する新しいテクノロジーであるプライバシー サンドボックスのテストに消極的であることを知りました。この事により、日本で広く採用されるためには、徹底的なテスト、明確なメリット、透明性のある規制ガイダンスが重要であることに気づきました。
複数の SSP および日本国内の主要広告主3社との協力により、SMN はスポーツ、モバイル、電気通信業界にテストの範囲を拡大しました。これらのパートナーシップにより、SMN はさまざまなオーディエンスとキャンペーンの目的で、実際に想定される形で Protected Audience API をテストすることができました。
SMN は、テスト可能な環境を設定し、テストプログラムで使用する、treament group と control group と呼ばれる2つの実験グループを確立することから始めました。Protected Audience API のメカニズムは、従来の広告技術とは異なるため、SMN は入札処理プログラムをサーバー側からデバイス側に移植することに多大な労力を費やしました。
入札リクエストが入ってくると、インフラとリソースの制約により、Cookie が無効化されたユーザーからのトラフィック量を処理できないことがわかりました。SMN チームは API テストに参加している SSP にこの問題を提起し、対処計画を策定しました。SSP と協力して問題領域を特定した後、SSPは実験グループからのリクエストをフィルタリングし、SMN がテストに必要なトラフィックを受信できるようにする新機能を開発しました。
Protected Audience に加えて、SMN チームはターゲティングと測定を強化するために、いくつかのプライバシー保護技術を調査しました。SMN チームは Topics API を分析し、その精度を従来の関心に基づくターゲティングと比較し、最終的に製品の入札ロジックの新しいシグナルとして統合しました。さらに、Attribution Reporting API を使用した実験により、キャンペーン測定におけるノイズの影響に関する貴重な洞察が得られました。この事は、プライバシーの状況が進化する中で重要な注意事項です。また、SMN はデフォルトの有効期限ウィンドウに制限があることによる問題点を報告しました。他の業界関係者からも同様のフィードバックが報告され、この事を受けてプライバシー サンドボックス チームは Flexible Event-Level 機能をリリースしました。SMN はこの機能を現行のテストに組み込んでいます。
テスト結果と学び
SMN は、プライバシー サンドボックス API のテスト結果が有望であると結論付けました。Protected Audience を使用した広告配信は、従来のシステムと遜色なく機能し、一部のケースではより高い CTR を達成し、ユーザーのプライバシーを保護しながらリマーケティングが可能であることが実証されました。一方で、API 処理によるオークション処理等の遅延といった課題も明らかになりました。SMN は、アドテク事業者が API 実装における技術的な障壁を克服するため、継続的な検証が必要であると指摘しています。この課題に対し、プライバシー サンドボックス チームは、技術の進化に対応した 遅延対処のベスト プラクティス ガイドを定期的に更新することで、アドテク事業者の API 実装の最適化を支援しています。
SMN が今回のテストを通して得た学びは、広告業界がオンライン プライバシーの新しい時代に突入するにあたり、SSP、DSP、広告主、媒体社間の緊密な協力がこれまで以上に重要であるという事です。広告業界が今テストに積極的に参加すれば、Protected Audience はプライバシーを重視したリマーケティングの新しい標準を設定し、企業に永続的な価値を提供することができます。
今後、SMN は Trusted Execution Environments (TEE)環境下に実装するキーバリュー サーバーをテストし、Bidding and Auction Service を使用した実験を行う予定です。SMN は、新しい視点を得て、より正確な結果を得るために、プライバシー サンドボックスのウェブ 技術のテストを継続し、広告エコシステムにテスト結果と推奨事項をプライバシー サンドボックス チームと共有するよう強く奨励しています。SMN は、ウェビナーやアドテク業界のフォーラムへの参加を通じて、プライバシー サンドボックスのテストから得られた知見を、日本国内および世界中の他のアドテク企業と共有しています。この協調的なアプローチは、広告エコシステム全体のテクノロジーを洗練させ、改善することを目指しています。
「私たちのテストでは、ユーザーのプライバシーを尊重しながら正確な結果を提供する Protected Audience の可能性が実証されました。技術的なハードルは決して低くはありませんが、長期的な価値を見据えて取り組むことを業界に奨励します。私たちは今後もテストを実施し、プライバシー サンドボックスや幅広い広告業界と緊密に協力して、プライバシーと実用性の両方を向上させる配信方法にしていきます。」
すべての事例紹介を見る