プライバシー サンドボックス テストからの学び
はじめに、プライバシー サンドボックスやその他のプライバシー保護の取り組みに基づいて製品を導入、展開し、テストしてきた 業界の様々な企業(英語)による関与とフィードバックに感謝申し上げます。6 月末には、十数の企業による検証結果が英国競争市場庁 (CMA) に提出され、CMA によるプライバシー サンドボックスの評価に役立てられるという大きな節目を迎えました。
本記事では、テスト プロセスからの重要な学びと分析情報をご紹介します。
まず、プライバシー サンドボックスを採用したソリューションは、サードパーティ Cookie を使わずにウェブ上でデジタル広告を配信、測定できることがテストを通じて明らかになりました。また、こうしたソリューションの効果を理解するには、エコシステム全体の関与が極めて重要であることもテストによって示されました。なぜなら、サードパーティ Cookie が使われていない小規模のトラフィックで行われたテストでは、完全にサードパーティ Cookie が廃止された状態での市場の需給力学や動因を再現できず、現時点でのテスト結果は、1% のユーザーのサードパーティ Cookie が無効化された 2024 年上半期の環境での可能性を示しているに過ぎず、2025 年の状況を的確に表すものではないからです。
重要な学びとして、活気あるエコシステムを支えるためには、プライバシー サンドボックス技術の採用範囲の広さと深さが求められることが挙げられます。これには、プライバシー サンドボックスを導入する参加企業の数と多様性だけでなく、API やその他の基礎技術に適用される機能サポートと最適化の程度も含まれます。特にプライバシー サンドボックスを利用したソリューションを経済的な利益につなげる上で、次の 4 つの重要なポイントが明らかになりました。
1. DSP と SSP の連結強化による媒体社の収益の向上
2. 広告主と代理店の需要を喚起するソリューション プロバイダーの種類の拡充
3. トラフィック量増加のための広告技術による機能サポートの拡大
4. パフォーマンス結果を最適化するための大規模モデル トレーニング
DSP と SSP の連携強化による媒体社の収益向上
ウェブ上でのプログラマティック広告取引を支える基盤となるのが、デマンドサイド プラットフォーム (DSP) とサプライサイド プラットフォーム (SSP) です。これらのプラットフォームの多くは、Protected Audience API を含むプライバシー サンドボックス技術を実装しており、プライバシーを保護しながら広告オークションを実行できるようにしています。
ただし、まだプライバシー サンドボックスの API を導入していない DSP や SSP には、大きな導入拡大の余地が残されています。導入済みの DSP / SSP においても、現在のプログラマティック環境と比較すると、プライバシー サンドボックスを介した連携はごく一部にとどまっています。
たとえば、2024 年上半期のテストでは、通常は数十社規模の DSP と連携する SSP が、プライバシー サンドボックス経由で連携しているのは数社のみだったケースもありました。このような限られた連携では、買い手の需要やオークションの競争が弱まり、媒体社収益の低下につながってしまいます。逆に、連携が増えれば、媒体社の収益向上も期待できるのです。
広告主と代理店の需要を喚起するソリューション プロバイダーの種類の拡充
DSP や SSP はエコシステムに属する各社が使用する唯一のツールではありません。広告主や代理店からは、Protected Audience API が主要なアドテク事業者でサポートされれば、キャンペーン運用が可能になるとのフィードバックが寄せられています。ここでいう主要なアドテク事業者とは、測定、認証、データ管理、オーディエンスなどのソリューションを提供する企業です。これらのソリューションは、デジタル広告のウェブ上でのトランザクションにおいて重要な役割を果たします。現在、プライバシー サンドボックスでは多くのアドテク事業者と連携しており、今後、さらに多くのアドテク事業者がプライバシー サンドボックスをサポートすることで、広告主の需要が喚起され、ひいては媒体社の収益向上にもつながります。
トラフィック量増加のための広告技術による機能サポートの拡大
テストの過程で、プライバシー サンドボックス API を基盤とした広告技術ソリューションのためには、強固な機能サポートがいかに重要であるかが明らかになりました。
例えば、初期の Protected Audience テストでは、ビューアビリティ(視認性) の機能が不十分であるというフィードバックがありました。ビューアビリティは、広告主、代理店、媒体社にとって重要な指標であり、キャンペーンの価値を正確に評価する上で欠かせません。しかし、ビューアビリティのサポートが不足していたため、買い手はキャンペーンの価値を正確に判断することができませんでした。
その後、アドテク事業者がビューアビリティのサポートを追加したことで、テスト参加者は価値評価指標が想定される範囲に収まるようになったと報告しています。これにより、Protected Audience を介した適切な広告購入が可能になりました。動画広告や様々な取引形態など、今日の広告技術製品のその他の主要機能も、サンドボックス API 上に構築されたソリューションに組み込まれつつあります。これらのソリューションがリリースされると、サードパーティ Cookie が利用できない場合でも、広告主はより多くの希望するオーディエンスにリーチでき、媒体社はより多くの在庫を収益化できるようになります。また、アドテク事業者には、サードパーティ Cookie の無い状態でもソリューションをさらに最適化できるチャンスでもあります。たとえば、現在、バイサイド ソリューションでは、サードパーティ Cookie が存在する場合にのみ入札するのが一般的です。プライバシー サンドボックスなどの新しい技術により、サードパーティ Cookie のないトラフィックを効果的に収益化できるようになるため、この機会を最大限に活用するには、アドテク事業者のソリューションにこれらの技術を組み込む必要があります。
パフォーマンス結果を最適化するための大規模モデル トレーニング
今日の広告主と媒体社のソリューションは、入札であれ媒体社の収益管理であれ、パフォーマンスを最適化するために機械学習モデルに大きく依存しています。これらのモデルは、過去のデータを使用して将来のイベントを予測しています。アドテク事業者がプライバシー サンドボックスなどの新しい技術を採用するにつれて、これらの予測モデルは、サードパーティ Cookie がない環境でのデータで再トレーニングする必要があります。今後、アドテク事業者の参加とサードパーティ Cookie なしのトラフィックが拡大するにつれて、新たな環境に適合したデータセットの拡大に伴って機会学習モデルのパフォーマンスが向上し、広告主と媒体社の結果が向上することが期待されます。
今後の方向性
エコシステム全体での協力を通じて、これらの新しい技術をより幅広く深く採用する機会が広がります。その結果、ユーザーのプライバシー保護を強化し、広告主と媒体社の双方にとってよりよい結果をもたらすことができるようになるでしょう。